東京国際映画祭学生応援団

タタミの東京国際映画祭学生応援団のレビュー・感想・評価

タタミ(2023年製作の映画)
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【スポーツと政治の関係性を描いた力作】
女子柔道の世界大会に出場したイラン代表のレイラは、順調に勝ち進んでいくが、このまま勝ち続けると、イスラエルの選手と対戦する可能性があるため、イラン政府から負傷を装って棄権するように命令されてしまう...というお話。

2018年に日本の武道館で行われた柔道の世界大会で起きた事件を基に作られており、スポーツへの政治介入の描写がとても生々しかった。

国のために棄権するか、個人の名誉と家族のために試合に出るかの二択を迫られるレイラの葛藤に胸が張り裂けそうになり、サスペンスのような緊張感が常に画面に漂っていた。

通常のスポーツ映画であれば、試合に勝つたびに嬉しい気持ちになるが、この映画では、勝ち進む度に不安な気持ちが大きくなり、自分が勝ち負けのどちらを望んでいるのかが分からなくなってしまい、物語が収束していくのをただ黙って見つめるしかなかった。

また、柔道の試合のシーンは非常に見応えがあり、投げ技のカメラワークや、畳の上での荒々しい息遣いに息を呑んだ。
後々分かったことだが、主人公と対戦した選手たちは全員元オリンピック選手で、動きについてもジョージアのオリンピックコーチが全面監修を行ったそうだ。

本作はイラン系フランス人のザル・アミールとイスラエル人のガイ・ナッティヴの2人が共同監督を務め、映画という芸術が国境を超えることを表現してくれた。

本作の想いが、世界に届くことを切実に願っている。
(学生応援団 わくと)


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