映像と音による斬新な16ミリ世界の構築
シャンタル・アケルマンの再来と言われているベルギーの新鋭バス・ドゥヴォス監督作品。
故郷・ルーマニアへの帰国を考えていたブリュッセルの建設労働者シュテファンはある日、植物学者シュシュと出会い、次第に心を通わせていく。
木漏れ日、工事現場、火にかかったスープ、苔、雨、蛍、街灯…
ワンカットそれぞれ独立した作品のような美しさです。
また、16ミリ画角の画面ならではの、余白の豊かさを感じるショットが素晴らしいです。
風で揺れる木々の映像に加えられた工事の音、相手がフレームカットされた形での会話シーン。
限られた情報から想像を喚起させる環境音。
また、2人の交流をフレームインしたり、フレームアウトする事で人の気持ちを表現する手法もユニークです。
アケルマンの再来?
受け取った雰囲気は全く違いました。
繊細な表現です絵と音のストイックなこだわりは同じでも、癒しと人との繋がりの肯定感が色濃く出ています。
素晴らしい映像にユニークな音響設計。
映画表現の新鮮な体現。
新しい才能に巡り合う楽しさ。
これだから映画鑑賞はやめられない。
エンドタイトルのコケが森を形作るように文字が埋まっていくのも素敵です。
前作の『Gost Tropic』も気になります。
本作品で200レビューになりました。
フィルマを初めて2年半になりますが、これからもゆっくりじっくりと、良い作品を味わっていきたいと思います。