よぼよぼのおじいさん

アメリ デジタルリマスター版のよぼよぼのおじいさんのレビュー・感想・評価

4.0
「一つ一つ言葉で説明してくる映画は嫌いだけど, これくらい振り切ってれば......〜 『Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain アメリ』」

- 「ねぇあなたは奇跡を信じる?」
- 「今日は無理です」
でもなんだかんだでうまくいくよ
せめてノンシャランとゆきましょー

冒頭で蠅が出てきて「おっベルゼブブ」→ブチッ→コメディですよ〜の流れを筆頭に, 喜劇的に期待を裏切るフリオチこそが仏映画の真髄. 好きな人は好きだし嫌いな人は嫌い

この映画ではメインの色彩がほとんど赤か緑(たまに色のバランスを取るために青もちょびっと出る). 赤は生命への情熱的な関わり, リスクを取ること, そして恋愛の可能性, 内気で内向的ながらも情熱を秘めるアメリを表してる. 緑は街中全体だったり, ニノだったり, 刑務所のような門の中に住む父親の周辺とかだったりするけど, これ!って言い切れるほど何かを統一的に表象しているわけじゃないと思う. 強いて挙げるなら静的なもの(自然とか). 同じような赤/緑の二元性を採用したものだとヒッチコックの『めまい』が有名でそちらは明確に記号的意味合いがあるけど, 本作はそういう映画内の設計自体を暗におちょっくてる気がする, 「単なる補色だよ〜ん, 綺麗じゃない?」みたいな...

ただ色の採用に強いこだわりがあることは確かで, 最後はニノの緑とアメリの赤を隔てる扉がアメリ自身の手で破壊され, 色相環における赤と緑の間, どちらかというと情熱である赤寄りのオレンジ色を纏ったパリ市街をアメリとニノはスクーターで駆け抜ける

いちいちモノローグとかナレーションで全部説明するのは大嫌いなはずなのに, 色彩も編集も音楽も大方好きになってしまうよ......
特に音楽, 色んな場面で聴いてきた曲が実はアメリの曲だったなんて!!!という驚きも相俟って楽しい


上映後に大学生らしき女性2人組が「ねぇこのあと証明写真撮って帰ろうよ」と言っていたのがあまりにも短絡的な発想で最早一周回って微笑ましかった、若者の自由な発想にはいつも驚かされる