千年女優

異人たちの千年女優のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.0
ロンドンのマンションに暮らすゲイの脚本家で、12歳の頃に両親を事故で失った後は世間体を気にして天涯孤独の生活を過ごすアダム。同じマンションに住むハリーと出会って互いに孤独を癒す間柄になった彼が、ふと実家に戻ると亡くなったはずの両親と再会して交流を深めるも徐々に幻覚に苛まれていく様を描いたファンタジードラマです。

多様な形の恋愛を掘り下げる人間ドラマで高い評価を受けるイギリス人監督のアンドリュー・ヘイが、山本周五郎賞を受賞した山田太一の代表作でかつては大林宣彦が映画化したことでも知られる『異人たちとの夏』を原案に制作した作品で、批評家たちからの絶賛を集めると数々のインディペンデント映画賞で多部門にノミネートされました。

日本では古来より親しまれる「怪談」の形を転用した土着的な作品を原作としながら、過去作でも幾度と取り上げた同性愛のテーマと組み合わせることで本作独自のグループを生み出して見事に自身の元に手繰り寄せています。喪失と孤独という生きる上で避けては通れぬ問題にじっくりと向き合い、痛みを伴う再生を捉えた機知ある一作です。
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