バナバナ

アメリカン・フィクションのバナバナのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0
モンクは黒人だが、医者の家系で兄姉も医者。自分は小説も何冊か出版し、大学で文学教授をしている。
だが、授業で学生に厳しく当たったことが原因で停職させられる。
東部の実家に久しぶりに戻ったモンクは、母が認知症になっており、実家の実務に追われることになって…、という展開。

モンクはストリートとは無縁な黒人にしてはエリート家系出身なので、ラップとか、如何にもな黒人文化とは無縁に生きてきた。
昨今、黒人作家で売れているのは、貧しく治安の悪い世界の話を売りにしている小説だけであり、“黒人”というと、そういうテーマに特化しないと小説も売れないことにウンザリしている。
だが、母親を高級老人ホームに入れるにはお金がかかり、片手間にわざと今っぽい感じで書いた三流小説が、あれよあれよと売れていき、モンク自身も戸惑うのだった。

アメリカ生まれで日本の公立小中学校に通い、高校、大学はアメリカの大学に行った黒人女性の方がYouTubで語っていたが、
アメリカの高校に入学した時に南部の州だったせいか、食堂が白人と黒人とで明確に分かれており(ドラマや映画の様に混在は全くしていない)、一応自分は黒人グループに入ったのだが「あなたは黒人らしくない。どうしてなの?」とか言われて、かなり戸惑ったそうである。
「黒人らしくない」とは?
アメリカなんだから個人主義とちゃうんかい!と思ったが、実際は違っていたことに驚いたそうだ。

アメリカで生まれ育った黒人は思った以上に、自分を“黒人”であると、縛り過ぎているのかもしれない。
また本作を観ていると、出版業や映画業界の裕福な白人は「どうせ黒人ってこんなんでしょ」と思っているところに、それに合わせることで稼いでいる黒人も居る様だ。

「自分らしく」よりも「黒人らしく」が優先されるアメリカ。
本作はその思考に鋭く踏み込んでいる作品だった。
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