はぐれ

Ryuichi Sakamoto | Opusのはぐれのレビュー・感想・評価

Ryuichi Sakamoto | Opus(2023年製作の映画)
4.5
2022年にNHKの509スタジオで数日間に渡り収録された音楽家・坂本龍一のラストコンサートに追ったドキュメンタリー。

ゲストで登壇をされた教授と親交があった役所広司さんが仰っていてたが長い闘病生活で筋力はなくされているのだが、それでも鍵盤と向き合おうとする教授の顔はなんて美しいんだろう。
1音1音を大事に丁寧に弾いていて、晩年にこだわっておられた音の響きを最大限に活かした渾身の演奏。長年教授のライブにも参加されていたミキシングのZAKさんの音響設計とも相まってピアノ弦の揺れの響きをその音が消えていく最後の一瞬まで味わうことが出来る。

メガホンを取るのは教授から映画の英才教育を受けていたという息子さんの空音央。洗練されたモノクロの陰影の中に父親の姿を後世に残そうとする強い気概が伝わってきて見る者の心を揺さぶる。演奏をする教授の背中って何であんなに神々しいのだろう…。

セットリストは昨年のライブ配信から数曲が追加されていて、その追加された演奏を含めることで教授が最後まで新しい表現が出来ないかともがき苦しみ鍵盤と格闘していたことが明らかになってくる。その最たる例が後のインタビューで「ここにきて新境地」と語った『Tong Poo』であり、前衛精神バリバリに音色にこだわった追加曲であり、長年のパートナーであるAlva Notoとのコラボ楽曲ではないだろうか。
そしてもちろん代表作である戦メリやラストエンペラー、aquaに隠れた名曲である嵐が丘も満身創痍の中、入魂の演奏。まるで一曲一曲と名残惜しそうに別れを告げながら弾いているよう…🥺

最後のライブが集大成であり新境地ってホントカッコよすぎですよ教授!😭
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