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雪山の絆のねーねのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
4.2
恥ずかしながら、私は本作で初めて「アンデスの奇蹟」とよばれる事件について知ることとなった。
1972年にアンデス山中に墜落した飛行機の乗客が救助されるまでの72日間を描いた実話だが、このようなことが実際にあったとはまだ信じがたい。
暗く寒い雪山と、取り残された飛行機の残骸のなかで、乗客たちがどのように生き残ったのか、どのようにして救出されたのか。
当然ながら、実際はこのような娯楽映画では描き切れないほど壮絶だったのだろうけれど、それでも十分に遭難の恐ろしさが伝わってくる作品だ。

生命のひとつも息吹かないような極寒の雪山のなかで、そもそも人間が何日も過ごすことが可能なのか?それを実現させたからこそ、彼らは奇蹟だったのか?
おそらく、私なら確実に途中で力尽きている。
アメフト部という強靭な肉体と精神力を持ち合わせた若者たちが多かったこと、スポーツチームならではの団結力と協調性があったこと、なによりも「絶対にみんなで生きて帰る」という強い意思を失わなかったことがこの奇蹟を生み出したのだろう。
それはまさに「雪山の絆」であり、人間の底知れないパワーを感じたし、大きな勇気をもらった。
ちっぽけすぎることで悩んでいる自分が恥ずかしくもなった。
彼らがとった食糧の選択肢は、当時はかなり議論の的となったようだが、あの状況下ではそうするしかなかったと思う。
あの選択は、ひとりじゃ絶対できない。仲間がいたからこそできたことだ。
最後、山で馬に乗った人を見つけた瞬間は、私までも涙が出た。

一歩先にも希望がみえない雪山の恐怖をここまでリアルに再現できるのは、さすがのJ・A・バヨナ監督だ。
「インポッシブル」のときも強く感じた絶望感を彷彿とさせる。
徹底した演出のリアリティは精神的につらいものがあり、冒頭の飛行機事故のシーンの痛ましさといったら、ただでさえ飛行機が苦手な私はかなりのトラウマを植え付けられることとなった…
多分、山の多いルートを通る飛行機はしばらく乗れない。(タイタニックのせいで一生船に乗ることができなくなった私に新たなトラウマが増えた瞬間。)
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