マーフィー

ビニールハウスのマーフィーのレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
4.1
2024/04/01鑑賞。

『パラサイト 半地下の家族』と比較するような煽り文句が日本のポスターでは添えられている、
第27回釜山国際映画祭で3冠を獲得した作品。
監督がポン・ジュノ監督と同じ映画学校出身というだけで、特にパラサイトと関係はないっぽい。

盲目の老人テガンと、その妻で認知症のファオクの介護士として仕事をしていた主人公ムンジョンが、ファオクを事故死させてしまったことを隠すために、同じく認知症の自分の母を代わりに用意する。
テガンが盲目ということからバレないように妻を入れ替えることはできるものの、
普通はさすがに別の感覚でいつかはバレるはず。
そこでテガンにあらわれる「もうひとつの要素」が絡み合って話を展開させていく流れはお見事。

またムンジョンが自助グループで出会うスンナムの存在も、とてもいいアクセントになっている。

こうして見ると様々な障害や疾病の特性、社会問題を巧妙に組み合わせて話が出来上がっている点はすごいなと思う。


そしてこのオチ。救いがない。
そこで終わってくれて良かったといえば良かったのかも。



どうでもいいけど、携帯の回線が3G/LTEになってて、韓国の携帯事情が気になった。


テガンに運転する機会を作るシーンを見て、
ある本で「車は自由の象徴」と言っていたのを思い出した。
この考え方を知ってるとすごく味わい深いシーンになると思うので、最後に引用しておきます。

"車の運転も、料理と並んで遂行機能をフルに使う複雑な行為です。認知症になれば、運転に適さなくなります。しかし、長年運転をしてきた人にとって、車は単なる移動手段ではありません。社会人になって、初めて買った車。その車に恋人を乗せて行ったドライブ。失意の中、一人車を走らせた夜の道。子どもができて、家族で遠出したときのこと。さまざまな思い出が、車には詰まっています。さらに車は、自分の意思でどこにでも行けるという、自由の象徴でもあります。足腰が弱って長い距離を歩けなくなればなるほど、駅の階段がつらくなればなるほど、車は大事なものになるのです。"
佐藤眞一『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』(光文社新書)



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