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熱のあとにのNemuimanのレビュー・感想・評価

熱のあとに(2023年製作の映画)
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名前を呼ぶことについての映画、と言うと直近では「枯れ葉」もそうだったのだが、こちらは延々に一方通行な関係性の示唆としてその行為が映される。
あまりにも多くの個人名が登場するこの作品で、お互いに名前を呼び合うシーンは記憶が正しければ一度も描かれない。
これは愛を語る事についても同様の作用を及ぼしており、この映画の人物たちは愛を語ることはしても語り合うことはしていない。
だからこそ、正面を向き合ったままに行われるカウンセリングはいかがなものかと思ってしまった。
一方的に語る愛と一方的に呼ぶ名前、それらが連綿と続くことで思いもよらぬ大きな人間関係に物語が発展していく。
後半、鳴海唯が出てきてこの複雑な人間関係に参戦してきた時に「あ、この映画は今まで観ていたより大きな人間関係が絡んでいたのか」と気付かされる。
そしてその人間関係というものは、とにかく目線の合わない関係性によって構築されており、故にラストシーンでの60秒間にはそれなりのカタルシスがある。

とはいえ、それらが悉く成功しているとは言い難い気もするし、冒頭5カット目と7カット目のカメラポジション(というかカメラの高さ)は全くもって逆の位置なのでは無いかと思ってしまう。
橋本愛を正面から捉えたカットはいずれも肩透かしを食らうような陳腐さが付き纏ってしまっており、これは台詞の問題もあるのかもしれないが、どちらかと言えば発声の問題だろうか。
橋本愛の声はどの言葉も重要なものにしてしまう蠱惑的な魔力があるのだが、それは扱いを間違えれば行き場の無いナルシズムに見えてしまう。

演出の面白さとカメラポジション、そして編集、芝居がどうにも噛み合っていないように感じられる。
バラバラの印象。
冒頭のスプリンクラーから噴水への繋ぎなんかに感じるワクワクが何処かに結実してほしかった。
名前を偽ってお見合いに参加していた小泉と結ばれてしまうという展開は些か露悪的なものに見えた(ホストへの反復?)す
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