ぶみ

Saltburnのぶみのレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
3.5
Don't get lost.

エメラルド・フェネル監督、脚本、バリー・コーガン主演によるドラマ。
大学生の主人公が、貴族階級の学生の大邸宅ソルトバーンで過ごすひと夏を描く。
主人公となる大学生・オリバーをコーガン、ソルトバーンに住む大学生・フェリックスをジェイコブ・エローディ、フェリックスの両親をリチャード・E・グラント、ロザムンド・パイクが演じているほか、アリソン・オリバー、キャリー・マリガン、アーチー・マデクウィ等が登場。
物語は、オックスフォード大学に入学したものの、同級生と馴染めない中、ふとしたことで知り合ったフェリックスに惹かれていくオリバーの姿が序盤のハイライトとなるのだが、本作品の真骨頂はここから。
オリバーがフェリックスに誘われ、ソルトバーンなる宮殿のような大邸宅で過ごす様が中盤以降中心となるのだが、何よりオリバーのフェリックスに対する想いが偏愛過ぎており、おいおいそこまでするかと思わずツッコミたくなるような行動が散見されるとともに、明確な系譜は語られないものの、貴族階級に属するであろうフェリックス一家、そしてソルトバーンそのものが放つ華やかさの裏に隠された閉塞感や、世間からかけ離れてしまっている感覚により、不穏な空気を常に漂わせているのが、本作品のポイントの一つ。
何より、コーガンがクセ強めな主人公オリバーを、まさに怪演しており、彼の一挙手一投足に目が離せなくなると同時に、フェネル監督の前作『プロミシング・ヤング・ウーマン』で主役を演じたマリガンや、はたまたニール・ブロムカンプ監督『グランツーリスモ』で同じく主人公であるヤンを演じたマデクウィが登場しているのも見逃せないところ。
そして、中盤のある出来事をきっかけに、一気にスリラー的な様相に舵を切っていき、迎える結末までの畳み掛けるような展開はお見事の一言。
何気なくクレジットを眺めていたら、プロデュースにマーゴット・ロビーの文字があったのに驚くとともに、青春ドラマの中に描かれるオリバーの狂気の沙汰に釘付けとなる反面、前述の監督の前作『プロミシング〜』と比較すると、表現方法は別として、オーソドックスな物語となってしまった印象を受けた一作。

びっくり箱のハンドルを回し、終末に向かっていくだけ。
ぶみ

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