いち麦

Saltburnのいち麦のネタバレレビュー・内容・結末

Saltburn(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

フェリックスや彼の家族から窺われるように、裕福な人間は気のおけない親友や真の恋人を渇望している傍ら、常に自分たちの周りに近づいてくる卑しい偽者を如何に見抜き切り捨てるか特異な嗅覚や冷淡さを自然と身につけてきている。オリヴァーがその幾つものバリアを掻い潜るかのようにフェリックスたちの前で見せた“擬態”の数々にとても驚き慄いた。尋常じゃない狡猾さ。見ていて何よりもまず最初に自分がオリヴァーを訝ったのは、ヴェニシアやファーリーまで組み敷く大胆な行動だった。彼は一体どこであのような性技を身につけたのだろうか、彼自身が語っていた出自や生活とはとても不釣り合いで奇異に感じた。
結末まで見てなるほどと納得した。確かに何処となく既視感のあるプロットだったが、この作品ではオリヴァーの心にはフェリックスへの真の愛が一切なかったのかどうか悩まされた。更にオックスフォード大学やソルトバーンの豪邸でのエピソードの一つ一つが生々しく引きつけた。特にあの巨大迷路まで有する屋敷の豪華さには目を奪われた。

ドラマの色がコロコロと移り変わっていく妙味を堪能できる見事な脚本。主人公オリヴァー役バリー・コーガンの気迫漲る怪演が素晴らしい。そして長身で目を引くマスクのジェイコブ・エロルディ。彼の優しい笑顔も魅力で脳裏に焼きつく。エメラルド・フェネル監督の前長編デビュー作「プロミシング・ヤング・ウーマン」で主役を務めたキャリー・マリガンがクセの強い役で脇を固めていたのも印象深い。秀作。



オリヴァーがバスタブの排水口に顔をへばりつけて吸う場面と素っ裸でチン◯を墓の盛土に埋める場面は圧巻。誰も見てないのにあの行為はフェリックスへの狂った愛、それ意外あり得ないと思った。バリー・コーガンの熱演に拍手。
いち麦

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