九月

Saltburnの九月のレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
5.0
本作を観たいがためにAmazonPrimeに加入…予想を遥かに上回る気色悪さと、ストーリー自体はシンプルながらも斜め上すぎる展開に衝撃を受けた。どの人物も少しずつ、いやかなり愚かなところもあり、最初は嫌悪感を抱いていた人物に対して最後は同情していたり、その逆もあったりと、全く目が離せない。
映像やこの映画のタイトルにもなっている、主人公の友達家族の豪邸「ソルトバーン」の古典的な美しさにも心惹かれた。
最後まで一体どういう見方をすれば良いのか分からずにいたが、まるで一瞬で終わったかと思うくらい引き込まれ、とても面白い映画だった。

地方から出てきてオックスフォード大学に入学したオリヴァー。序盤の、周りから浮いている感じ、唯一見つけた話し相手と一緒にいるけど彼のことなんてどうでも良くて友達とすら思ってなさそうなところ、もうすでにここら辺から心がざわついて仕方ない。
ひょんなことから近づき親しくなったフェリックスは皆の人気者で、どうやら裕福な貴族階級らしい。柔軟で現代的で、嫌味のない人物に映る。
各キャラクター全員良かったが、オリヴァーと終始対立するファーリーが何故かめちゃくちゃ好きだった。冷淡で見下した態度とか、全て顔に出るところとか最高。

大学やその周辺での所謂スクールカーストを感じずにはいられない雰囲気と、ソルトバーン内での一般人には理解の及ばない上流階級の暮らしぶり。その中で、底辺に座しているように見えて、異様な存在感を放つバリー・コーガンが不気味で凄まじかった。
愛情や好意を自分が向けるのと同じくらい相手にも返してほしい、憧れる人を見て自分もあぁなりたい、振り向いて欲しい、その気持ちを理解はできてしまうだけに、ただの執着とも言えるくらいの行き過ぎた度合いが恐ろしかった。
どこへ行き着くか分からない運び方や、どちらが良くてどちらが悪いとかいう結論にすら至らないところ、主人公や誰に対しても批判も賞賛もなされている訳ではないところも好き。
九月

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