ryosuke

レザボア・ドッグス デジタルリマスター版のryosukeのレビュー・感想・評価

3.8
 無内容の極みのダラダラとした会話劇が連続するのだが、やはり随所にタランティーノのセンスが迸る瞬間がある。オープニングの、クソみたいな会話を映し出しながらくるくると回転するカメラを見ながら、あータランティーノだなあと思っていると、例のイントロに合わせて男たちが歩きだす。流石のセンス。
 アクのある俳優陣を眺めているだけで満足感がある。ハーヴェイ・カイテルの渋みは勿論、スティーヴ・ブシェミは顔を見ているだけで楽しい。ティム・ロスの綺麗なお顔と鮮血の取り合わせも素敵。ローレンス・ティアニーは『犯罪王ディリンジャー』の姿しか知らなかったんだけども、肥えて全く別系統の悪人顔に仕上がってるんだから凄い。
 回想シーンとして差し込まれるブシェミの逃走劇が切れ味抜群。横移動撮影の疾走感。車に轢かれてフロントガラスが割れたと思えば即座に窓から女を引き摺りおろし、曲がり角に向かって強烈な連射をお見舞いする。このスピード感。ハーヴェイ・カイテルと床に倒れ込んだブシェミが銃を向け合うスタイリッシュなポーズ。引いていくカメラがマイケル・マドセンを映し出す。洒落てんなあ。
 タランティーノの残虐性が露骨に表れるのは警官虐待シーン。ミスター・ブロンドに拳銃を向けられた警官が、椅子に拘束されながら、意味もないのにできる限り顔を左右によじる演出が見事だった。とんでもなく酷い目に合わせてるんだけど、人質の警官の気持ちに完全に寄り添っている演出で、確かにそう動くしかないんだろうなと思わせる。カミソリを片手にラジオから流れる音楽に合わせて陽気にステップを踏むサイコを見たときの絶望感。耳を削ぐにとどまらず千切れた耳に話しかけちゃうんだから凄い。良きところでオレンジの銃弾がブロンドを貫く。二人の血まみれ警官のfuck合戦もクスッとしてしまう。
 複雑なメキシカン・スタンドオフが一瞬で破局を迎える瞬間に唖然とさせられる。血の泡がパチンと弾けるような、ダラダラとした会話はこの瞬間のためにあったと思えるような一瞬だった。ラストショットで手元を映さずに、あくまでどの拳銃から銃弾が飛び出したのかをファジーにする上品さと、なんにも残らない物語を人物を吹っ飛ばした後の無人ショットで締めるセンスに拍手。
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