MrOwl

アイアンクローのMrOwlのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.1
ザック・エフロン、お見事でした。
そして監督・脚本のショーン・ダーキン、感服しました。
素晴らしい映画でした。
プロレスを題材にした映画のため、なかなか食指が動く人が出にくいと思われる映画ですが、人間ドラマとして、家族の物語として、人生を描いた映画として、非常に良い映画だと思います。
題材はプロレスなのですが、描かれているのは
著名なプロレスラーを父として、その一家の一員として生まれたケビン(ザック・エフロン)を中心に、彼から見た父や母、兄弟たち、そして自分の人生と自分の家族の物語です。
そのため、プロレスは見たことないしな~とかプロレスってヤラセでしょ?なんかイメージが良くないな~
と感じる方でも、プロレスを描いている訳ではないので、
人間ドラマが好きなら、感動できる映画なので観賞してみてください。

ともあれ、フォン・エリック一家はプロレスラーなので、試合のシーンもあります。
そのため、役作りとしては、肉体改造が必要なのですが
出演している俳優さん達、凄いですね。
ザック・エフロン:ケビンは筋骨隆々な体
ハリス・ディキンソン:デビッドは長身なためケビンほどムキムキ感はない
ジェレミー・アレン・ホワイト:ケリーはケビンよりデビッド寄りの体系
スタンリー・シモンズ:マイク:兄弟の中で最も細身
とそれぞれのレスラーフォルムにかなり寄せてます。

メインテーマが人間ドラマですが、だからといってレスラーとしての役作りを手抜きしていないことが説得力を高めています。
同時代に活躍した、ブルーザ・ブロディもかなり寄せていて良かったです。
レスラーの人かと思いきや、Cazzey Louis Cereghinoさんというスタントマンさんらしいです。凄い。
更に、リック・フレアー役もアーロン・ディーン・アイゼンバーグという俳優さんでした。
こちらも素顔全然ちがうのに、リック・フレアーにかなり寄せてました。凄いです。
試合のシーンは時間としても短いのに、かなり作り込んでいる点も評価に値します。
その意味では、往年のプロレスファンも楽しめます。
プロレスに対するリスペクトが感じられますので。

また、プロレスに関する負の側面も、言及はしないものの
演出の妙でしっかり触れている点も良かったです。
例えばヤラセと呼ばれるような事前のやり取り、すり合わせを匂わせるようなシーン
肉体を維持するために使用されるステロイド(お尻に打つ(注射する)ことが多いんです)
痛みを和らげる鎮静剤の使用や依存
ステロイドを使用することで起きる精神的な情緒不安定や病気
などです。
そこにあまりにフォーカスすると、テーマがブレてしまうのですが
触れないとリアリティが失われてしまいますので
そのバランスをとって工夫した演出がなされているのは
上手いな、と思いました。

息子たちをチャンピオンにしたい父
ビジネスでも強かな父
不幸で我が子を何人も失ってしまう母
家族を大切にしたいケビン
様々な視点で描かれる「呪われた一家」と呼ばれてしまった家族の物語。
秀逸な作品でした。

プロレスラーを題材にして、不気味な男の悲哀、家族の苦しみを描いた秀作は、ミッキーローク主演の「レスラー」もあります。
「レスラー」が好きな方は、本作も堪能できると思いますし
本作が良かった、と感じた方は、「レスラー」もおススメです。
MrOwl

MrOwl