いち麦

DOGMAN ドッグマンのいち麦のレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
4.0
初め自分の大好きなイタリア映画「ドッグマン」(マッテオ・ガローネ監督)のリメイクだと勝手に思い込んでいたが全くの別物。謳われている“ダークヒーロー”とはちょっと違う。ノワールっぽくもありJ.フェニックスの「ジョーカー」を彷彿。リュック・ベッソン監督作品中では結構気に入ったほうかな。主演ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが悲哀たっぷりに良く嵌まっていた。

《以下ではネタに触れています》
一度、自分の主人や味方(犬たちからみれば友達のような存在)となった者には忠誠を尽くすが、敵に対しては激しく牙を剥く犬の習性。タイトル通り、この犬の特性は主人公ダグラスそのものを表していたのだと思う。彼の屈折した心が如何に形作られてきたのか、その経緯が良く窺える物語だった。ドラァグクイーンのパフォーマンスは自声を使わない口パクなのが普通で歌唱というより演技。件の舞台場面には演劇に熱中した頃の彼の感情が滲んでいて高揚。バイオレンス場面にはカタルシスも味わえ満足。またラストもなかなか渋い。檻の中で一旦は死んだも同然だった彼が犬に救われ再び与えられた命を神に返しているかのように自分は受け止められた。作品中でも示された通り“DOG”を反転させると“GOD”となるのが如何にも意味あり気。ただ、犬好きな自分としては、犬たちとどのように心を通わせられるまでになったか、彼の訓練経過は是非とも描いて見せて欲しかった。
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