ルイまる子

ナポレオンのルイまる子のレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.9
リドリー・スコットだから良いに決まってるが、本作はフランス人でもないイギリス人の監督がナポレオンの真実の?姿を描く。歴史の中で捏造された英雄が実際はたまたまタイミングや運で英雄に成り得た。実際は小心者だった、という話はよくあるし、その真逆に歴史上悪人とされているが、実は全く逆の天才、人民の幸福を願う立派な人物だったという話もよくある。西洋史クラスタだから細かいところまで、劇中何を指して何について言ってるのかよく理解出来たが、西洋史を知らない人には多分、「この人何やった人?」となるだろう。それほどに何も説明がない。


フランス革命後に頭角を現し、兎に角秒速で駆け抜けた軍人。でも結局一時的な盛り上がりがあっただけで、何か大きな躍進に繋がったわけでもない。ナポレオンという英雄が実はセコくて別に何をやったわけでもない小さい男(気持ちも身体も)で、妻ジョセフィーヌは肝が座った強くて感覚的な女だが、彼女一筋で彼女なしでは何も出来ないヘタレという描き方だ。


そして、肝心のリドリー・スコットが描きたかったことは?映画監督として、人生最後に巨大な戦闘シーンを多くのエキストラや軍馬(あれは本当に殺してる?)豪華絢爛な美術などで豪快に最後を飾りたかったのだろう。ホアキン・フェニックスとヴァネッサ・カービーは良かった。何が悪いというわけでもないが、最後までおお!と目が釘付けになる映像美でもない。それにナポレオンの心の中に肉迫したでもなく、ただただ、ヘタレだったことしか伝わらない。最後に流刑の島で二人の少女にロシアに火をつけたの誰か知ってる?俺だよ、の下りはなんかなあー、ヘタレをヘタレたらしめた小さな自慢話か。『キラーズ・オブ・シスタームーン』のデカプリオのヘタレだが、「どうしようもないアホだけど憎めない善人」という性格ほどには確立してもいなくて、中途半端だった。ちょっと残念だが、見応えはあると思う。
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