九月

ナポレオンの九月のレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.7
高校生の頃、異様に世界史とりわけヨーロッパ史が好きで、物語の続きを待つのと同じように週一回の授業を楽しみにしていたのを思い出して懐かしくなった。
そんな、教科書の中でしか知らなかった史実がスペクタクルかつ悲惨に描かれ、結末が分かっていても手に汗握る。特に、奇襲攻撃や氷上での戦い方に見入った。

ナポレオンについては特に何とも思っていなかったけれど、人々から圧倒的に支持されていた側面の印象が強い。この映画では、あくまでも凡庸な人間だと映った。
誰かにとっては英雄(もはや神様)でも、誰かにとっては悪魔のような存在になり得るというのはどの世界でも同じ。勝者がいる裏にはまた敗者がいる、というのは普段から感じていることで真新しさはないものの、とても腑に落ちた。
私はサッカーが好きで、ここ十数年ほどJリーグで応援しているチームの試合を毎週末欠かさず追っているが、そうやって普段熱狂している勝負の世界とも何ら変わりないように思えてきて少しゾッとした。(何の思い入れもないチーム同士の試合を観ている時は判官贔屓をしてしまうのに、こと自分の応援するチームの勝利となると相手については何も思い及ばない。)

映像やプロダクションデザインなど贅沢で、地に足着いたこのような形で歴史を描いた映画は好き。ただ、かなりフラットな目で見られた分、最後には虚無感しか残らなかった…が、それもまた良かった。
九月

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