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ナポレオンのtorumanのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.0
フランス、陸軍、ジョセフィーヌ

ナポレオンの生涯は駆け足で描き、主軸のテーマはナポレオンとジョセフィーヌの関係でした。

家長家存続の為、不妊症のジョセフィーヌとは"友達"の関係になるが、晩年になってもお互いの愛を引きずっていく。
『ゴッドファーザー』のマイケル・コルレオーネとケイの関係を彷彿させました。
セントヘレナ島の晩年もシチリア島のマイケルの最後と被ってきます。

軍人としては天才肌だが、ジョセフィーヌにはめっぽう人間臭いナポレオン。
ホアキン・フェニックスは文句なく素晴らしいです。
キャッチコピーの"英雄か、悪魔か"とはちょっと違いましたが。

ジョセフィーヌ演じるヴァネッサ・カービーも魅力的です。
結婚時の鼻っ柱の強さとしたたかさ、離婚時に見せる弱さ、離婚後の儚くも淡いお互いへの愛。
色々な彼女の顔を見せてくれます。
これは彼女の代表作になると思います。

この作品で特筆すべきは映像です。
豪華な衣装とセットを彩どる自然光とロウソクの光で表現された影と色味。
目を奪われるシーンが次々と現れます。

スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』は動く絵画ですが、この作品では、ダヴィッドの「ナポレオンの戴冠式」をそのまま再現しています。
現代のCGやソフトによる色階調整は、なされていると思いますが、それを差し引いても素晴らしいシーンです。

戦闘シーンも随所出てきますが、歴史を語る上での背景や節目のように使われている為、思ったよりも淡白な扱われ方でした。
それでも、「アウステルリッツの戦い」や「ワーテルローの戦い」は、尺もとって見せ場として満点です。
俯瞰で見せる大勢の兵士と戦いの規模の大きさ、腹に響く大砲の音、大スクリーンでのみ味わえる映像体験でした。

今回はグラシネIMAXで鑑賞しました。
画角はIMAXではありませんが、映像を浴びるような贅沢な体験は、W30mの大型スクリーンならでは。
映画元来の魅力を味わえました。

スコアが荒れ気味の作品ですが、私はかなり楽しめました。

リドリー・スコット監督。
自分の中では、作家というより職人気質の監督ですが、流石、光と影を表現する第一人者!
見せ場に溢れた作品に仕上げてくれました。
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