ヤマト

甘い人生のヤマトのネタバレレビュー・内容・結末

甘い人生(2005年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【 堕ちた明確な理由。落ちた不明確な理由 】
 とにかくイ・ビョンホンに尽きると思う。これでもかというほど、魅力が凝縮されている。カッコいいのは当たり前の話だからここでは言及しない。
 昨日の友は今日の敵よろしく、訳もわからぬまま元仲間たちに狙われてしまう。孤高に立ち向かい、孤独に苛まれるイ・ビョンホンが本当にカッコいい。静かに感情を燃やしながら、復讐を遂行していく様はまさに一匹狼そのもの。鏡に映る孤独になった自分を「大丈夫」と鼓舞するシーンや、ひとり静かに涙を流すシーンにはどこか心が動かされてしまう。ちなみに堕ちた明確な理由は、ボスの愛人の心を奪ってしまったからである。これは人間として最も辛く屈辱的なことだと思う。ある意味ではボスは素直である。
 ボスから愛人の護衛を任された、イ・ビョンホン。あろうことか愛人に好意を寄せてしまうが、本人は気づいていない。そうなのだ。いつの間にか落ちるのが恋であり、そこには理由や条件など関係ない。豪快に言うと、好きになっちゃうものは仕方ないのだ。時すでに遅しだが、死ぬ寸前に「好きだった」と気付き、彼女との短い思い出を回想する。確か本作では、その時の時間こそ、『甘い人生』と結論づけていた。
 本作のイ・ビョンホンはよく食べる。よく寝る。生物としての本能が刺激されるのか、食べたり寝たりするシーンはいつだって観ていて気持ちがよいものだ。それがイ・ビョンホンならなおさらのこと。その重要なものを決しておろそかにしないイ・ビョンホンからはありったけの生命力を感じるし、一見の価値があると思う。プロの殺し屋を演じているが、まさにそういったところが一流なのだと思う。また、よく食べよく眠る人生こそが、『甘い人生』といえるのではなかろうか。
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