トールキン

月のトールキンのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.2
この作品をどう評価していいものか非常に迷う。闇が深い、憂鬱、胸くそ、ただそれらの言葉だけでは済まされないような色んな思いが絡み合って頭がこんがらがる。
さらに陰湿な雰囲気がずーっと続く。

世の中、綺麗事を並べるだけで生きていけるか。誰だって嫌なものは嫌だし現実から目を逸らしたくなる。めんどくさいことには関わりたくない、臭いものには蓋をする、不都合なことは隠蔽する。みんなやってるから別にいい、など、辛いから、耐えられないからそれらを正当化してしまう。果たして本当にそれらを行なって良いものか、もしくはそうせざるを得ないとこまで追い詰められているのか。

誰にだって心に闇を抱えて生きている。理由は人それぞれ様々。辛い過去や思い出を抱えて、または今が辛い現状だから。それらを含めて生きていくって本当に大変だと思う。このまま生きていて意味があるのか、頑張って生きていったその先に何があるのか、それはその人にしか分からないしその人が自分で答えを見つけていかなくてはならない。そんなことを言ってるけどこれもまた綺麗事かもしれないし何が正しくて、何が間違ってるかもそれは自分で判断して生きていかなくてはならないと改めて思わされた。

メインの4人の役どころが良い意味でも悪い意味でも光っていた。宮沢りえとオダギリジョーの夫婦は自然体な夫婦だなって感じれたし、独身だから分からないけど夫婦ってこうやって支え合っていくものなのかなってしみじみ思えたし、お墓参りのシーンは涙が出た。

二階堂ふみは闇を抱えていてそれが内面に留まらず表面上に出してしまっているようなそんな人物像、その表現が良かったと思う。
そして、磯村勇斗演じるさとくん。一概にただのサイコパス、とは言えない何とも複雑な人物像。やってることはめちゃくちゃ犯罪で悪いこと何だけど彼は彼なりの正義感や信念があったのは間違いないし、心の闇がふと爆発してしまったからの行為。解釈としては間違ってるかもしれないけど瞬時にジョーカーを彷彿とさせた。
今作ではかなり台詞の多い役どころだったと思うけど自然と演じられていたのはやはり役者としての凄みを感じられた。

さとくんと洋子の終盤のやり取りは自分だったらどうだろうか、とめちゃくちゃ考えながら見てた。さとくんのやった行為まではいかないとしても心の中でどう感じるか、人としての心を保てるであろうか。
覚悟して鑑賞に挑んだが予想以上にエグい内容で見終わった後はめちゃくちゃ疲れました。オススメは出来ないけど良くも悪くも衝撃的な作品でした。
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