YasujiOshiba

ザ・クリエイター/創造者のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
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D+。24-63。そうかギャレス・エドワードって『モンスターズ/地球外生命体』(2010)の監督さんなんだ。みてから気づいた。道理で風景描写が上手い。そこにCGを重ねてくるんだけど、風景の絵が良いものだから画面が生きるんだよね。みごと。

これってまさにガザで起こっていることのパラブルだよね。映画のなかで抹殺の対象となる「AI」は、そのままハマスやタリバンやテロリストなどの言葉と置換可能じゃないかと思う。

関係ないけど最近いまさらながらにディープ・パープルが気になっている。そのパープルから2曲かかるのだけど、なかでも『Child in time』が気になるではないか。有名な曲だけど、この映画を見ながら、ああそういうことかと思ったので、訳出しておく。

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優しい子よ やがておまえは
あのラインを見ることになる
ラインが引かれるのはちょうど
善と悪のあいだなんだ
おまえは盲目の男を見るだろう
そいつは世界に向かって撃ちまくってる

弾丸が飛びかって
そりゃひどいもんだ
おまえが悪い子だったなら
ああ、きっと悪い子にちがいない
なのに飛び交う鉛玉に
まだ撃たれていないのだとすれば
目を閉じておきな
頭を下げておけ
跳ね返ってくるタマに備えとけ

今はおまえのために泣いやってるのさ、ベイビー
おまえに歌ってほしいのさ

Sweet child in time
You'll see the line
The line that's drawn between
The good and the bad
See the blind man
He’s shooting at the world
The bullets flying
they are taking a toll
If you've been bad
Lord, I bet you have
And you've not been hit
Oh, by flying lead
You'd better close your eyes
You’d better bow your head
Wait for the ricochet

I’m crying for you baby, now
Oh, I wanna hear you sing

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盲目の男というのはもちろん、AIを目の敵にしている軍人たち。自分たちのしくじりをAIのせいにしてその殲滅を唱え出す。AIのジェノサイド。AIは人間ではない。まるで人間のように泣き叫んだとしても... 。これって、ぼくらがちょうど目の当たりにしていることじゃないのだろうか。

これまで AI を目の敵にしてきた映画とは逆に、この映画は彼らの側に立つ。スピルバーグ/キューブリックの『A.I.』とはまた違った意味で、新たな下層階級としての A.I. は、アジア的世界と共存している。このあたりが日本贔屓のギャレス・エドワードの面目躍如。気味が悪い存在ではない、友人としてのロボット/AIは、手塚治虫からのアジア的なものなのかもしれないけれど、それはおいておこう。

むしろこのパラブルは、おそらく意図することなく、繰り返されてきた戦争の欺瞞をついている。ちょうどヴェトナム戦争の最中にパープルが『Child in time』を歌ったときのように。だから「やさしい子どもはやがて」、マデリン・ユナ・ヴォイルズが依代となったAIのように、「跳弾 the ricochet」となって、訛りの球を打ちまくったヤツを、その笑み/涙で撃ち抜くのだけれども、それはあくまでもパラブル。

それでもぼくは、この笑み/涙の背後にあってうごめく、あの無数の小さな霊のことを思わずにはいられないのだ。

PS
音楽はハンス・ジマー先生だけど、引用されている曲がおもしろいのよね。
このサイトにまとまっているのがありがたい。
https://filmmusik.jp/the-creator/
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