ベビーパウダー山崎

ザ・クリエイター/創造者のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
2.5
死が永遠の別れではなく、死を永遠の愛に結びつけるのはロマンチスト。犠牲のうえで成り立つ(一時の)勝利というのは『ローグ・ワン』でも試みていたが、はみ出し者に光が当たる(希望を持ち込む)物語を好むギャレス・エドワーズ。
弱者の視点から病んだ世界を描きたいというのは表現者として圧倒的に正しいが、その存在として子どもを中心に置くと、無垢と泣きに寄せすぎて冷める。映画全体としては、点と点しか描けていないので、インパクトのあるビジュアルは目につくが、それだけ。回想を感傷の道具としか使えない作家は三流。結局人間ドラマを見せたいなら、展開はもっとシンプルで良い。
エドワードは、ロマンチストであり強烈なナルシストでもあると思うが、ハリウッドで名のある役者をわんさか使って、学生映画のような「青臭い」映画を撮れるのは、その志や熱意が金を動かしているのだと思うし、「作品の質」以外では評価できる。
正義と強さをベトナム側に示したベトナム戦争、もしくは911テロはイスラム側にもやむを得ない主張があったのではないのかと言いたげで(アメリカがもたらした最悪の結果)、人間対AIと謳ってはいるが、超大国アメリカが抱えた問題、恐怖心からの支配(虐殺)を、アジア圏に属する小国が死にものぐるいで抗う物語のように見えたりもした。