矢吹健を称える会

ヒトラーは死なないの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

ヒトラーは死なない(1945年製作の映画)
2.8
 敗戦後のドイツ国民(ナチ党やその行為ではない。ドイツ国民全体、ドイツ人の「国民性」そのもの)を非難しまくる激熱プロパガンダ映画。なんとアカデミー賞を受賞している。現代じゃ絶対作れないだろうな……。

 しかし、本作は完全なオリジナル作品ではない。
 映画のベースとなったのはフランク・キャプラ監督が前年に制作した『Your Job in Germany』という米兵向けの作品。この作品の権利をWarnerが譲り受け、ドン・シーゲルに追加編集をさせたのが『ヒトラーは死なない』なのだそうだ。どちらもYouTubeにあるので比較できるが、なるほど、最初のヒトラーが消えたりするのは『Your Job in Germany』からそのまま引き継がれたものだ。「総統その1」「その2」といった形でビスマルクやヴィルヘルムII世が紹介されるあたりも同様。
 ただしこちらは米兵向けなので、後半は「ドイツ国民と親しく付き合うなかれ」とかなり実際的な提言をしはじめる。

 一方、『ヒトラーは死なない』は後半でさまざまなモンタージュを駆使しており、これは編集畑出身のドン・シーゲルの本領発揮といったところか。途中に『モスクワへの密使』(ドン・シーゲルが編集している)のラストシーンが引用されており興味深い。「前やったあれ、また使お」みたいな感じか。サンプリング感覚か。
 しかし本作の最大の功績は、ナレーターを変えたことじゃないか。これが名調子で実に聞かせるのだ。