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開拓者たちのねーねのレビュー・感想・評価

開拓者たち(2023年製作の映画)
3.3
東京国際映画祭にて。
20世紀初頭、チリで行われていた先住民族虐殺の歴史を明るみにする作品。
イギリス人とアメリカ人、そして先住民との混血である青年の3人の道中を、青年の瞳を通して描いていく。

道を拓くためには邪魔だから、という理由だけで平気でその土地に住んでいたインディアンたちをなぶり殺しにしていく冷徹な白人たちが恐ろしくも、戦争で培った時代の誤った風潮とは人の道徳をも殺してしまうものだと思わされる。
先日公開された「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」とかぶる部分もあり、開拓者たちが繰り返してきたこの歴史は今でも決して正当化されるものではないが、今この現代でじゃあどうするのが正解なのだろうと考える。

上映が終わった後の監督のQ&Aで、「このようなチリの暗い歴史はずっと政府によってひた隠しにされていたが、近年になりようやく事実として認められ始めた。しかし、こんな凄惨な歴史ですらも映画という形をとることで一種のエンターテインメントとして扱われてしまう。自分も映画人であるからこそ、こういう表現手段しかないが、せめてもの反抗心を表現したくて、この映画を撮った」という話をしてくださった。
物語の前半は残虐で生々しい描写が続くが、後半では打って変わって、西洋の文化に取り込まれてしまう先住民たちの行く末を描く。
そのコントラストが美しいと感じる一方で、決して染まるまいとする先住民たちの固く閉ざされた口と強い眼差しは、画面を通してこちらに突き刺さってくるようで。
何も歴史を知らず平和に生きている自分の無知さを恥じたし、それを知らせてくれた監督には感謝したい。

痛々しいほどビビッドな赤と黒の色使いは一見ユニークな遊び心ある映像に見えるが、私はそこから漂う血の匂いに耐えられない思いだった。
観客に大きなインパクトを残したであろう本作。
そんな監督の手腕は、今後もなにかしらの形で世間に評価されていくんじゃないだろうか。
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