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哀れなるものたちのnoborushのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
1.5
哀れなるものたち 2023年作品
3/10
Poor Things
ヨルゴス・ランティモス監督
アラスター・グレイ原作
エド・ギニーヨルゴス・ランティモスアンドリュー・ロウエマ・ストーン
エマ・ストーン マーク・ラファロ ウィレム・デフォー ラミー・ユセフ
ジェロッド・カーマイケル クリストファー・アボット スージー・ベンバ
キャサリン・ハンター ヴィッキー・ペッパーダ インマーガレット・クアリー

まずランティモスが今までどう素晴らしかったかというと、無理筋の世界、設定を作った上で
普通の背景にもの凄い違和感を醸し出してきたことにあると思う。
「アルプス」は故人のふりをする人達の話。
「ロブスター」はパートナーを見つけなければ、自ら選んだ動物に変えられ、森に放たれる。
「籠の中の乙女」は文字通り箱入り娘の話。
「聖なる鹿殺し」はたまたま知り合ってしまった少年が家庭に不幸をもたらしてくる。
どれも異常な設定の中で、人物が解決を得ようともだえ苦しんでいる。
そんな快と不快のギリギリの映画たちで、どれも素晴らしかった。
潮目が変わったのは「女王陛下のお気に入り」だった。そもそもランティモスは脚本に
参加していないのもあるが、女王陛下のお気に入りになろうとする二人の女性の
争いという、極めて普通な映画で、広角レンズの多用と、オリビア・コールマンの
演技により体裁は保っていたが、そもそもランティモスの映画だったのか疑問が残った。
しかしながら、同性愛を扱ったりとアカデミー賞的にはありだったのだろう。
そして本作。これまた、ランティモスは脚本に参加していない。
アラスター・グレイの原作は1992年の出版で、舞台は19世紀末のゴシック小説。
その時代に退治の脳を移植された女性が、成長していく様を描いているのだけれど、
原作がそうだから仕方が無いけれど、まずテーマが古くさい。
文字通り幼児の頭の女性を世話する様は、マンズスプレイニングを揶揄しているし、
女性の性を否定する(割礼)男、女性が他人と自由に寝ることで、所有物として扱っていた
男が怒ったり、女性が利発になることに脅威を憶えたりという女性に対する男性の
反応というものが、今更過ぎる描写だった。
また、衣装やセットがものすごく緻密であるが、それがまた喧しい。
ウェス・アンダーソンの様に画面作りに注力して、他は体して重要視していないならまだしも、
女性史全体を盛り込んでいるから、テーマ、衣装、セット
(さらなる広角レンズの多用)総てが詰め込まれすぎていた。
アカデミー的にはポリコレ的で満足なのだろうが、昔のランティモスの方が
ずっと挑戦的だった。
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