いはん

哀れなるものたちのいはんのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
ぬああああ、なんだこらぁ(いい意味で)!!!
ヨルゴスランティスモだから元から構えて望んだのに、私の脆弱な盾など一瞬で木っ端微塵にされた気分。白黒の世界から色彩溢れる世界になる。使い古された感じのトランジションなのに、ワクワクが止まらない。

観る前、なんでR18なんだろうと予告編を観ずに挑んだ私には分からなかったけど、なるほどそういうことねとなった。でも、当たり前にどの性的なシーンにも必ず何ならの意味が隠っている。初めて快感を知るという成長、快感を全力で抱擁するという成長、そして体よりも意識の快感に重きを置けるようになるという成長。いずれの段階にもベラを導く存在が配置されており、ベラは見事なほどに真っ直ぐに、彼らに導かれるままに成長した。Poor thingは最初、間違いなくベラだった。でも、彼女が成長していくにつれ、poor thingsは間違いなく、ベラが関わった一部の社会の“良識”や知らぬ間に形成された偏見に蝕まれた人々のことを指し示すようになった。その人というよりかは、その現象だろうか。

こういう実験的な映画は作られる価値がある。議論を醸し、人々に考えることを強いる。最終的に辿り着く答えは、その人のこれまでの経験値で大きく決定されてしまうにしても、橋をかけてあげることで、将来的な価値観の変化を期待することができる。この映画こそ本物のフェミニズムなのではないかと感じるが、きっと一部のミサンドリーよりの“フェミニスト”からは強く批判されるのだろうなと思ったりした。まぁ、そういう過激な議論や批判も時には人々に思考的向上をもたらすだろう(たぶん、、、ほら、悪い例を見ると自然と何が正しいか分かる的なこと)。
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