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哀れなるものたちのtorumanのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
クラシカル、ゴシック、パンク、インダストリアル…
様々な表現が混ざりあった魅力的な人工世界が彩る、ヨルゴス•ランティモス監督が語る無垢なる者の成長記。

自分の赤子の脳を移植されたベラは、様々な経験を得る事で周囲の人間にも影響を与えていく…
奇想天外な設定を卓越した映画表現で魅せていきます。

映像:内の世界のモノクロから外の世界を表すアンビエントな色彩へ。
魚眼レンズを使った好奇な目線から、ベラの成長に合わせて端正な目線へ。
衣装:無垢で自由なヴィクトリア調子供服?からフォーマルないでたちへの変化。
映画を構成する要素の一つ一つがなんて魅力的なんでしょうか。
不協和音のような音楽や音響もランティモスらしく素晴らしいのですが、これらも語ると膨大な長文になってしまいそうです😅

その中でもエマ・ストーンの卓越した演技。
赤子〜幼児〜大人へと急成長するベラの表現が凄い!
ギクシャクした歩きから、力強い歩みへ
チラチラ動く目線から、しっかりと焦点のあった揺らがない目線へ
体の動きと成熟していく感情表現・知識の蓄積が一体化した気持ち良さを感じます。

今までの作品と比較すると、"女性の自立、古い因習からの脱却"というテーマが明確に横たわっており、これをランティモス流の独特なタッチで描いている印象です。

それ故、過激な表現があっても前向きなポジティブさがあり、今までの作品とは違う異質の手触りを感じます。

そしてランティモス作品で描かれてきた、ある意味封建的な世界をベラが破壊する爽快な作品でもありました。

TLが未だかつてないくらいこの作品に埋め尽くされました。
スコアの高さも含めて、今年1番の注目作品でしょうが、自分にとっても期待を裏切らない映画らしい映画でした。
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