oln

哀れなるものたちのolnのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.8
【人とは何か、何を以て其の人か】
ジャンル:真理の探求

とんでもない角度の設定から出発する物語なので、どこへ行き着くことやら終始翻弄されます。幼児の知能に大人の身体を持たせたとき、確かにそのように至る分岐もあるかもと思わせる程度には地に足がついていて、でもそもそも大前提が地に足がついていなくて、独特の浮遊感が漂う内容です。

本作の主人公・ベルの選択は、一つの結論を出すためにパターンを検証をしたい、その中からベストの選択をしたいという欲求からの行動であるように読み取れます。目の前に良きものが提示されたとしても、世の中には更に優れたものがあるかもしれない、ならば知見を広めようという選択には共感できるため、個人的に気持ち悪く感じる世界の描写も、なんとか受け入れられました。

この異様な世界の中に生きる、異様な存在として描かれるベルが、斯く在るべき存在なのだと、ごく自然に理解させるエマ・ストーンの演技にも拍手です。予告編から見て取れる以上の体当たりの演技もさることながら、彼女の表情や一挙手一投足から、状況、感情、成長を的確にキャッチできます。
当然のことながら、脇を支える各者の世界観構築あってこその作品です。色弱でもわかる色使いの妙であったり、衣装や音楽の素晴らしさ、人物と背景へのフォーカスの当て方、素晴らしいという言葉では尽くせない作品でした。

※先行上映で鑑賞しました。
oln

oln