けいすぃー

世界のはしっこ、ちいさな教室のけいすぃーのレビュー・感想・評価

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教育とは子供を金や宗教、親などの社会的権力から解放するものだと大学時代のフランス共和国思想の授業で学んだのを思い出した。教育は人の可能性を拡張し新たな視点を与えるが、教育を受ける前にその価値を認識するのは難しい。教育を十分に受ける機会がなかった親の理解を得ることや、子供自身の興味をひくことは簡単ではない。

このドキュメンタリーで扱われていた3地域はどこもそれぞれの難しさを抱えている。ブルキナファソではさまざまな民族と言語が混在していたところに、植民地主義の結果としてフランス語という共通語が生まれた。そもそも言葉が通じない子供に1から言語や他教科を教える必要がある。
シベリアでは遊牧生活をするところにロシア語圏が覆いかぶさった。遊牧民としてのアイデンティティを保持しながら公教育を受けさせるバランスが興味深い。
バングラデシュでは児童婚が問題となっていて、ただでさえ子供に教育が行き届いていないのに、女性は10代で人生選択の自由が奪われる危険がある。

この映画自体の着眼点や問題提起に大きな価値があるが、物語がどちらかといえば教師たちの工夫が功を奏し、子供たちも笑顔になって終わったところに少しの不安を抱いた。実際の現場はより過酷で、上手くいかないことも多く、教育の機会を得られていない子供もまだまだ多い。
また、西洋的・近代的な概念である教育と自然な生き方で得られる幸せの対比について考えるのも面白い。
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