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世界のはしっこ、ちいさな教室のkamakurahのレビュー・感想・評価

3.5


「希望」の具現化ー『世界のはっしこ、ちいさな教室』レビュー

2014年にミニシアター系で上映され、フランスでの大ヒットを前評判に日本でも多くが駆けつけた『世界の果ての通学路』の製作チームによる3人の教師を追ったドキュメンタリー。前作以上に教育の重要性を体感させられる仕上がりである。

識字率向上が国家の喫緊課題であるブルキナファソの僻地で働く新人教師サンドリーヌ。雪深いシベリアに暮らす遊牧民で、遊牧の伝統消滅を危惧するスベトラーナ。バングラデシュ北部の農村地帯水没地域で、ボートスクールを仕立て、22歳の若さで子どもや女性の権利を守るべく戦うフェミニストのタスリマ。彼女たちの苦難に胸詰まらせながら、救いはなんと言ってもそこに活写される子どもたちひとりひとりの笑顔。いずれのエピソードも重く価値あるものだが、二児の母でもあるブルキナファソのサンドリーヌが語る子どもたちに世界を知って欲しいという言葉に、2100年には世界人口の5分の2を占めることが予測されるアフリカの未来を思った。
列強の勝手な思惑ゆえに、小国乱立を余儀なくされたアフリカが大連立して世界を牽引できるようになるか否かは、やがて訪れるその時代を支えるはずの君たちひとりひとりにかかっているんだよ。先生が情熱を持って教えているように、広い広い見識を鍛えて生き抜いていって欲しい。観ながら、そんなことを願っていた。

教える者と教えられ求める子どもたちとにより知らされるリアルな現状が訴えるすべてが深刻ではある。それでも、ここには紛れもなく「希望」の兆しが具現化されているのだと思いたい。前作にもまして必見作です。
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