くりふ

跡形もなく消えるのくりふのレビュー・感想・評価

跡形もなく消える(2023年製作の映画)
3.5
【なぜこの村は女を敵に回すの!】

アマプラ入荷の新作。ある好きなライターさんが評価していたので見てみれば、成程、わかりづらく感じさせるノイズは気になるものの、伝えたいことが明確な、良作でした。

閉鎖的な村で若い女性が何人も失踪するが、男たちは誰も事件扱いしようとしない。ウィーンに住むヒロインは、自分の妹まで居なくなったことで帰郷するが…。

枠としてはミステリなのでしょうが、要は、村に蔓延するミソジニーゾンビのお話でした。捜査で炙り出されてゆく犯人がそれで、対処しようにもまた湧いてくる。喰われないように共存するか、その場を去るか、しかできないと思わせる、結論からすれば鬱映画。

正確にはLandkrimi(国内…田舎?の犯罪)という、オーストリアの単発TVシリーズ、その一本。すでに36本ほど作られており、この質でそれだけ続くのってスゴイな、と思います。

わかりづらいのは人物関係。冒頭の紹介部分など、何故か奇妙なカット割りで、顔を見せなかったりしているが意味あるの?オーストリア本国の人なら直感的にわかるのだろうか。

あと、字幕に幾つも誤字が含まれており、もしや、訳が甘いのでは?表示のタイミングも含め不親切。ドイツ語らしいが、わかる人の評価が知りたいですね。

そして事件の真相判明は慌ただしく、巧くない。それらをノイズに感じてしまいました。

女性監督の筆さばきは鋭いと思えませんが、描きたいこと…というか願いが、ノイズを散らしてズシリと伝わります。だから、鬱映画であっても後味は悪くないです。ゾンビがどうしても人間に戻らないなら、もう放っておいて次行こ、てトコでしょうか。

原題『Immerstill』は村の名であり“ずっと沈黙”との意味らしい。これも的確ですね。

Landkrimiシリーズは他にも何本か、アマプラで見られるようなので、また追ってみます。

<2023.10.30記>
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