ヘルシンキのスーパーマーケットで働くオンコールワーカーで、いつ解雇されるかも分からず絶えないウクライナ紛争報道もあって気分が晴れないアンサ。ある夜に友人と訪れたカラオケバーでアルコールに溺れる工事現場勤務の寡黙な男ホラッパと出会った彼女が、お互いの不遇やすれ違いを重ねながらも愛を重ねる様を描いた恋愛映画です。
フィンランドを舞台にしたローカル映画がキャリアのほとんどでありながら『過去のない男』でカンヌ国際映画祭グランプリを獲得するなど評価の高いアキ・カウリスマキが前作『希望のかなた』での引退を撤回して制作した2023年公開作品で、カンヌ国際映画祭で審査員賞を獲得して公開されると変わらぬ作風で各国のファンを喜ばせました。
お馴染みの不遇な人が新たな一歩を踏み出すキュートな物語は洗練されていて、あえて無表情を貫くなど視線は客観的ながら巧みに挟み込まれるオフビートなユーモアで観客を感情移入させて不器用な二人の恋愛を応援させます。過去に何かがあって今がどうでも出会いが未来を変える、誰の人生にもあるささやかな希望を綴っている一作です。