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落下の解剖学のkaitomoのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.1
ある男が転落死し、状況的には妻が犯人である可能性が極めて高い。しかし、果たして真相は…?と、ミステリー仕立てではあるが、むしろ本作は法廷劇を通じて語られる夫婦間の話であり、それ以上に、確定しない真実との向き合い方の話であり、重要なのは真相ではない。
検事さんが途中、なぜか夫婦間のいざこざでどっちが悪いか、という話を本人の著作をもとに嬉々として語ろうとするのが面白い。明らかに脱線なのだが、状況証拠しかないなかで、いかに心象形成をしていくかという方向に行くのだ。
近年でも話題になるスキャンダル問題もそうだが、突き詰めると真実は本人にしかわからないし、本当の事を言っていても本当の事を言っているという証明は不可能な場合も多い。そんな中、周りの人物はどうやって判断をするべきか、みたいな問答があるのも印象的。
一つの地味な事件で、大きな展開もなく、リアリティ重視の硬派な内容で2時間半走り切る。諍いの内容もめちゃくちゃリアルで面白い。すべての人が関係者になりうる、投げかけるような作品で、集中力が切れず没頭できた。
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