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落下の解剖学のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.5
いやぁ、この法廷ミステリー作品はおもしろいし考えさせられるし感動した!!絶対おススメ。邦題間違ってない?「ボーダーコリーは見ていた 女流作家と死んだ夫の秘密」しかないでしょ(ショーン・ベイカー監督作品の邦題ネタです😅)。実際の邦題はほぼ直訳で「落下の解剖学」ですが、これは紛れもなく"人生の解剖学"だと思いました。人生ってなんでこんなに難しいんだろう... 終盤の息子君の証言は涙なしには観られません😿

フランスはこれをオスカーに推薦しなかったなんて、やっぱりフランス人は感性がおかしいですよね🤣オスカーの自国推薦は、スペイン、インドあたりも毎年批判されていますが、フランスは特にひどい... でも、改善される兆しは全くなしで我が道を行くというのもフランスらしいかな。その点、日本は海外で何がウケるか冷静にとらえ、毎年最適な選出をしてくるから素晴らしい。と同時に、日本がいかに外部の目・他者の評価を気にするかという裏返しでもあるのかも。

人里離れた雪山でひっそりと暮らす作家の夫婦と事故で視力を失った息子。ある日、夫が転落死しするが目撃者がおらず、不審死とされる。妻サンドラと息子ダニエルの証言もやや辻褄が合わずサンドラによる殺人の可能性が浮上し、弁護を担当するサンドラの旧き友人さえも疑いの目を持つ。そして、法廷で次々明かされていくこの一家の内情、果たして真実はどこに...

まずは、ミステリーとして最高にハラハラしておもしろい。事件の真相は全く読めないし、どっちにどう転ぶかわからない法廷の緊張感が凄まじい。証拠がなさ過ぎて、仮説ばかりの空論が飛び交う検察と弁護人のやり取りは確かにイライラさせられるけど、その歯がゆい感じがより一層観ている側の真実を知りたい欲求を駆り立てる。ってか、検察なんて死んだ人の知り合いでもなければ直接会ったわけでもないのに、なんであんなに熱くなれるん?有罪になったら100億ユーロくらいもらえるんじゃないかと思ってしまう情熱大陸的なお仕事ぶりでした(笑)。実際の検察ってどうなんだろう?

でも、この作品は決してそれだけでない。法廷の中で明かされる事実で浮かび上がってくるのは、父(母)であること、夫(妻)であること、そして夢や幸福を求める一人の人間であることの複雑さや苦しみ。そうした人生の難しさをまざまざと見せつけられた後の、総括としての息子ダニエルの証言... 誰もが自分の人生を振り返り、そして前を見て明日へ進む。そんな素敵な作品でした。

2023年新作お気に入りランキング(1/3暫定)
1位:The Holdovers
2位:パスト・ライブス/再会
3位:哀れなるものたち
4位:キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
5位:バービー
6位:AIR/エア
7位:落下の解剖学(本作)
8位:American Fiction
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