NORA

PERFECT DAYSのNORAのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
朴訥としたトイレ清掃員の男を主人公に据え、繰り返される日常の端々で出会うーもとい、「通り過ぎていく」人たちとの交流を通じ、人生の苦味、喜びの瞬間ひとつひとつを切り取っていく。
東京に点在するおもしろ公衆トイレを舞台に選んだあたりはなるほどヴィム・ヴェンダースらしい着眼点であり、同時にいかにも賞レース狙いが見え透いたエキゾチシズムが鼻につかないでもないが、映画自体は質の高い演技、抑制された演出に支えられた、大人の鑑賞に耐えうる作品に仕上がっている(いかにもステレオタイプに描かれる「清掃員を蔑視する母親」のような、出来の悪い日本映画のごときエピソードは不要だが)。
作り手の用意した最大の見どころは無論、ラストシーンの役所広司の表情であろうが、個人的にはその直前、三浦友和との川岸での会話シーンの二人のやりとり、呼吸が何より素晴らしかった。あのぎこちなさ、ままならなさ、そしてそれでも奥底で通じ合う何か、そのか弱くも確かなつながり、それこそが「人生」の真髄であり、「人間」の愛おしさである。こんなふうには生きられないけれど、僕は、そう思う。
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