KenzOasis

PERFECT DAYSのKenzOasisのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
東京都内に点在する、美しくデザインされた公衆トイレを掃除するおじさんの日常話。

多くを語らず、同じような日々を淡々と過ごしながらも、木々の揺れや光の反射、移動時間の音楽という小さな変化を楽しんでいる。

一つ一つ現れる木漏れ日のカットをはじめ、銭湯での平山(演:役所広司)夜景を前に酒を飲む平山を映すカットがまず、写真としてめちゃくちゃ良かった。

そして移動時間にだけ流れる音楽がすごく良くて、Pale Blue Eyesが流れた時から心は掴まれておりました。

あまりにも描かれる日常の美しさが際立ちすぎていて、綺麗すぎるとは思う。本当はもっと汚くて、嫌な瞬間だらけだろう。美しいトイレが保たれるのは平山なような「影にいる」と表現されるような存在のおかげなのに、外面ばかり見ているのが多数だろう。

そこではなく、変化し続ける光にフォーカスし、慈しむことを選んだこの映画。

自分も写真が好きでよく撮るけど、本当に写真を撮るべきは平山のように「ああ綺麗だ」と思える瞬間なんだよなと改めて思わされる。木が好き、揺れる光が好き、豊かな音楽が好き。カメラに写したいものは本来、好きなものだけなのだから、構図だのなんだのは二の次で、その瞬間のためにこそシャッターを切るのだと感じた。

自分に言い聞かせるようにI’m feeling goodの曲をかけ、感情を目に溜めるラストは悲しいようにも思えるけど、個人的には、日々にある豊かさに平山が助けられるシーンなのかなと思っている。

良い映画だった。
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