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PERFECT DAYSのMALPASOのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.7
映画『PERFECT DAYS』

素敵で、素敵過ぎる映画だった。

反復する描き方、淡々と進むけれど、退屈しない。ヴェンダースが尊敬し影響を受けた小津安二郎監督の作品のような映画。

監督・脚本はヴィム・ヴェンダース。東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する『THE TOKYO TOILET プロジェクト』の一環で制作された映画。
舞台は東京。主演の役所広司が演じるのは、トイレの清掃員。

カンヌ国際映画祭男優賞を受賞。

カーテンのない窓、朝陽で目覚め、布団を畳み、歯を磨いて、缶コーヒーを買って、軽ワゴンで出かける。
公衆トイレを淡々と念入りに掃除。見えない底も手鏡で確認するほど。
仕事が終わると、自転車で銭湯へ。行きつけの浅草の地下の飲み屋で一杯。100円で買った古本を眠くなるまで読んで就寝。
昼の休憩はコンビニのサンドウィッチとパック牛乳。胸ポケットのフィルム・カメラで毎日同じ木を撮影する。

畳、布団、銭湯などなど、日本の文化や習慣を素敵に見せてくる。そして、テーマは世界一綺麗な日本のトイレ。映画には渋谷区の最新のデザインされたトイレがたくさん登場する。

無駄なく慎ましくシンプルに生きる事。自身の仕事を真っ当する事。変わりなく過ぎる毎日の中で見つける小さな幸せ。
主人公のルーティンが崩れた時、彼の心に乱れが生じ、過去が少し明らかになる。

主人公の過去が少しだけ垣間見えるのが、読者と音楽。仕事の行き帰りに古いカセットで聴いているのは、洋楽が中心。アニマルズ、ヴェルヴェット・アンダーグランド、ヴァン・モリソン、ローリング・ストーンズ、パティ・スミス、ニーナ・シモン・・・休日の部屋で流れるのはルー・リードの♪PERFECT DAY。
そんな彼の趣味から過去を想像するが、姪の名前はなんと、ニコ。間違いなく彼が名づけたはず。
客にせがまれ飲み屋のママ役の石川さゆりが歌う♪朝日があたる家・日本語バージョンもよかった。

日本には、『木漏れ日』という言葉がある。

そういえば、ヴェンダースのデビュー作『さすらい』は冒頭いきなり野糞のシーンがあり驚く。あれは本当に出してると思う。今回は床に寝ても大丈夫なくらい綺麗なトイレです。

老後はこんな生活をしたい。







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