リオン66

キリエのうたのリオン66のレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.5
 広瀬すずが闊歩する東京を描いた映画。

 とどのつまりは、アイナ・ジ・エンドを撮ろうとしたものの、広瀬すずの空虚な演技の魅力の方に軍配があがってしまった映画と言えるだろう。

 岩井俊二がアイナ・ジ・エンドをミューズにして、映画を形作ろうとしているのが、ポスターから既に滲み出てくる。映画も終始その有り様だ。それが決して悪いとは言わないが、あまりにも多岐にわたる役柄、十字架を背負わせすぎるあまりに、酩酊してしまっている嫌いがある。もう少し、話を整理して彼女への負担を減らすことができれば、また違う印象を受けたのではないだろうか。

 その反対に、広瀬すずには監督からの負担があまりないためか、のびのびと演じている。その役柄が現代的な空っぽさを見事に体現していた。取っ替え引っ替えに服装、髪色などは代替性を比喩させ、それを着こなす姿は見事であった。そして、新宿を歩く彼女の姿は現代の若者そのものだろう。

 このように、二人のアイドル映画としてとらえれば及第点になる。だが、岩井俊二の映画としてはどうだろうか。
 あまりにも、これまでの作品の要素を換骨奪胎しすぎていて、語りたいことが本当はないのではないかと疑ってしまうほどだった。そして、メッセージ性が古臭いためか、警察の演出も鼻についた。

 時代と向き合いながらも距離を保った岩井俊二の新作を待ちたい。
リオン66

リオン66