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キリエのうたのシネマノのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
4.0
『若者の感性をバグらせる岩井俊二の帰還』

この世界には、確かに岩井俊二からしか摂取できない養分がある。
一度観れば、その感性ももう元には戻れない。
カルト的な人気を誇る彼が、アイナ・ジ・エンドという、魂の叫びを具現化したミューズと共に帰ってきた。

事前情報はあまり入れずに楽しんで欲しいから、ストーリーなどはグダグダと書くことをやめておく。

ただただ、考えず感じるままに岩井俊二へ身を預ければ178分、特濃のグロテスクなまでに美しい映画を堪能できる。

行き場を失った魂がこの国を揺蕩う
その理由は国、人、そして天災によって唐突にもたらされる。
声をあげても、傷つき泣き叫んでも救われぬ世界で、声さえ失ったキリエはどう生きるのか。

確かにこの国に存在する(しかもその数は決して少なくない)本作の登場人物たち。
その縁と運命は、まるで魂がただただ揺蕩うようであり、岩井俊二はそれを美しき映像に焼き付ける。

そして、その魂はただただ叫び声をあげる。
幸せや救いを求めてというよりも、もっと根源的な叫び。
キリエのうたは、そして響く。
どこで、誰に、何をもたらすのか。そして自分に何をもたらすのか。
その結末とともに、久しぶりに劇場で体感した特濃の岩井ワールドで映画鑑賞における賢者タイムに突入すること間違いない。

完璧を目指した映画とはまた違う、凄まじい破壊力は健在だった。
まだまだレビューはまとまらないので、余韻を味わいつつまたリライトしよう。

▼邦題:キリエのうた
▼採点:★★★★★★★☆☆☆
▼上映時間:178min
▼鑑賞方法:映画館鑑賞
▼鑑賞劇場:T・ジョイ PRINCE 品川
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