ヒノモト

破壊の自然史のヒノモトのレビュー・感想・評価

破壊の自然史(2022年製作の映画)
3.7
「バビ・ヤール」「ミスター・ランズベルギス」などのセルゲイ・ロズニツァ監督最新作。
過去のアーカイブ映像を編集、音楽などの効果を加えて、製作されたドキュメンタリー2作が同時公開されました。

『破壊の自然史』

第二次世界大戦末期、連合軍はイギリス空爆の報復として敵国ドイツ国内へ、絨毯爆撃を行った。
このような攻撃を行った爆撃機の製造量産過程、爆弾の効果の実験や装填、そして爆弾投下、各地で行われた空爆の映像記録、その後のドイツ国内各地の惨状の映像などを元に、戦争時における正義の振るい方について、フラットな視点で問う作品でした。

結果としての連合国側から見た時に、猛威を振るったドイツや日本は悪であり、結果大きな空爆空襲、そして原爆などを受けて、戦争を終わらせるための正義を発揮したということになるのですが、映画内では、テロップやナレーションなどが一切無く、どれがどの空爆でとか、どこの国の映像かということも一切説明なく、展開することに戸惑いは多くあるのですが、ある意味、戦時中において、どちらが正義で悪かという基準はなく、攻撃されたら反撃するという縮図に、破壊する場所にいる人たちや建物の被害という事実だけが残り、それは国同士の争いの中の被害者という視点においては、誰もが犠牲者であるということ。

戦後の事実を知る観客が、あえて戦中の出来事の説明を廃すことで、冷淡な視線で今作を眺めることで、見えてくる戦争や殺傷するための武器や爆弾というもの産み出す人という存在の愚かさを噛みしめる意味として、観終わってから染みてくる内容だと思いました。
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