ベビーパウダー山崎

首のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.0
芸能界で頂点立って、映画でもそれなりに巨匠になって、それでもまだデタラメな表現で勝負しているの、普通に狂ってる。タモリは散歩してるし、さんまはテレビで笑いを突き詰めてるけど、たけしのこの創作意欲は化け物。たけちゃんバウバウ。
キャラクターの感情を行動に乗せ、あたかも物語があるように見せてきたが、基本は場面場面のパッチワーク。歴史の点しか映せていないので大河なデカい流れは伝わってこない。シナリオはあるんだろうけど、セリフがガキっぽい。ヤクザ映画なら、その言葉の幼稚さが芸にもなるが、時代劇ならもっと重みが欲しい。
たけし映画の住人たちが、引っ切りになしに出てくるから、豪華な役者陣を見ている分には楽しい。いまだに津田寛治とか矢島健一を立たせるたけしは義理堅い。『アウトレイジ』もそうだが、新メンバーはたけしから遠く(敵側)に配置される。秀吉に近い役者ほど、たけしは信頼している。大森南朋は俺らが思ってるほどたけしに愛されている。たけしと大森と浅野のくだりは、アドリブっぽいやりとりも切らずに残していて、本気で楽しそうだった。
西島は誠実というか、たけしのなかでは愚直(白痴)なイメージ。加瀬亮はたけしのタイプ。ああいう顔が好きなんだよ。たけしもドSでありながらドMなイーストウッドと同じ性癖があるから、加瀬亮のような文学青年っぽい「男」が暴力的な言動で当たり散らすのはゾクゾクしているはず。西島と加瀬でプロレスさせていたが、あれはゲイポルノを撮ってる気分だと思う。
キム兄が案外うまくて驚いた。人殺しのアクションはキム兄のくだりが一番良かったよ。たけしは芸人への愛情が深すぎる。大杉漣が生きていたら、ピエール瀧が捕まっていなければ、どの役柄を与えられていただろうと勝手に考えていた。
結局はビートたけしの主演作を北野武が延々と撮り続けているということ。コントでも映画でもドラマでも、全部一緒。ビートたけしがなにをしたいのか、そのスクリーン(フィクション)でどう映りたいのかがすべて。さすがに老いて死が近づいてきているから、逆に活力のある表現になっている。あと三本ぐらい監督できるでしょ、次はまたヤクザ映画をたけちゃん頼むわ。