けーはち

ゼロの音のけーはちのレビュー・感想・評価

ゼロの音(2023年製作の映画)
3.4
“名は体を表す”ではないが、「ゲスの極み乙女」なるバンド名で不倫や未成年との交際をして一時期話題になったバンドマン川谷絵音が新しい境地を開拓する映画主演。急病で前のように手が動かずチェリストの道を諦め、市役所に勤める青年が主人公……喪失感たっぷり、マニュアルに唯々諾々と従う真面目クズというか無思考・無気力・無感動ぶりが堂に入っている。うだつの上がらない役人として働くそのうち、かつて尊敬したチェリストとばったり出会い、その死を機に遺品を縁者に返すべく動くロードムービーへ転調。長野の田舎を行脚する彼はやがて音楽やそれをきっかけに他人と繋がる楽しさを思い出し、喪失を受け入れて、新たな道を歩んでいく。派手さはないが低音のチェロがよく似合うしっとりした小品。