ぶみ

ネクスト・ゴール・ウィンズのぶみのレビュー・感想・評価

3.0
みんな、幸せになろう。

タイカ・ワイティティ監督、マイケル・ファスベンダー主演による実話をベースとしたスポーツ・コメディ。
ワールドカップ史上最悪となる0対31で大敗した米領サモア代表チームと、新たに就任した監督の姿を描く。
主人公となる新監督トーマス・ロンゲンをファスベンダー、米領サモアサッカー協会会長をオスカー・ナイトリー、ロンゲンの元妻をエリザベス・モスが演じているほか、カイマナ、デビッド・フェイン等が登場。
物語は、米領サモアチームが、アメリカを追われた鬼コーチを監督として迎えて立て直しを図る様が中心となるが、サッカーに詳しくなく、ワールドカップにも殆ど興味がない私は、恥ずかしながら予選で記録的大敗があったことは初めて知った次第。
そんなサモアチームにやってきた鬼監督を近作ではデヴィッド・フィンチャー監督『ザ・キラー』で名もなき寡黙な殺し屋を演じたファスベンダーが、対照的に情熱的な姿で好演。
展開としては、サモアのゆったりとした時間や、国民の性格から、コメディ要素を基調とした緩い空気感で進行、そんなチームと監督が対立しながら一体感を深めていくという、スポーツものの王道を行くものなのだが、前述のようにサッカーに詳しくない私は、次の予選まで四週間という限られた時間の中、何をどう教えて強くなっていったのかが全く見えてこず、また、相手国となるトンガも強いのか弱いのかわからなかったため、今ひとつのめり込むことができず、スポーツもの特有のカタルシスが得られなかったのが正直なところ。
クルマ好きの視点からすると、ロンゲン監督が現地で与えられたのが、少し古めのトヨタ・カムリだったため、特に触れずにスルーしようかと思ったところ、フォワードのジャイヤが乗っていた赤いクルマが、フロントマスクは映っていなかったのだが、そのサイドからリアにかけてのシャープなフォルムは、間違いなく、私が遠い昔に憧れていたトヨタの二代目スープラ(日本名:セリカXX)であったのは見逃せないポイント。
ノワールものの殺し屋から、スポーツ・コメディの監督まで、ファスベンダーの懐の広さに感服した反面、前述のように、強くなっていく過程の描写が読み取れなかったり、はたまた各キャラクターが、いかにもなデフォルメ化されていたような気がしてしまったため、コメディだとしても、もう少し丁寧さがあっても良かったかなと思うとともに、平日のレイトショーで、今年初の貸切鑑賞という贅沢な時間を過ごすなか、物語ではなく、赤いスープラの登場に一人小躍りしてしまった一作。

誰も不幸になってほしくない。
ぶみ

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