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アロハの心をうたい継ぐ者のdendohのレビュー・感想・評価

アロハの心をうたい継ぐ者(2014年製作の映画)
3.6
トランスジェンダー映画祭で鑑賞。

ポリネシア文化圏に古くから存在する第三の性『マフー』であるヒナ(クムヒナ)を中心として描くハワイのドキュメンタリー映画。ヒナのパーソナリティについては英語版ウィキペディア記事があり、そちらを参照するのが良さそう。
https://en.wikipedia.org/wiki/Hinaleimoana_Wong-Kalu


恥ずかしながら、本作と『カパエマフの魔法石』の鑑賞により初めて『マフー』の存在を知る事となった。
『マフー』とは、定義的にはMtFのトランスジェンダーと思われる。男女の特徴をどちらも体現する存在として尊敬される存在であり、伝統的社会においては重要な職務に従事してきた。植民地支配を通じてマフーやハワイの伝統文化は迫害の対象となったものの生き残り、それを伝承する存在が本作の主人公のヒナである。

ヒナの夫はトンガ人で、昔は拒否感のあったものの、今はマフーの存在を寛容的に受け止めているが、若干パターナリストでモラハラ感があるのは観ててハラハラした所だ。トランスジェンダーの方はシス以上に『女性らしく』『男性らしく』を意識している人が多いイメージがあるが、この夫婦もその枠に留まったりしないか不安だ。

もう一人の主要人物がヒナの教え子のホオナニだ。彼女(彼)は男性中心のフラグループに所属しており、身体女性ながらチームのセンターを務める。ホオナニ達の圧巻のダンスパフォーマンスが映画のハイライトとなる。
なおホオナニもマフらしいのだが、それが厳密なトランスジェンダーを意味するのか確信を持てなかった。言葉の端々から察するにやはりトランスなのか?いずれにせよ、チームメイトがホオナニを茶化すことなく、最大限の敬意を持って接しているのは印象的だ。

何だかんだぶつ切りで観てしまったので、内容をちゃんと理解できたか怪しい。『アロハ』の概念が何なのかはいまいち分からなかったが、ヒナの言葉を信じる限り、部外者が安易に消費して良い言葉ではないと感じた。いずれにせよヒナと夫の関係性やダンスシーンをぼーっと眺めるだけでもそれなりの学びはあると思う。

なお全くセクシャルマイノリティとは関係ないのだが、ホノルル鉄道の開発の為の掘削作業時に先住民族の意見を求めるというエピソードが、地味~に『辺野古埋め立て土砂に沖縄戦の遺骨が混ざってる』問題と類似していてビックリした。アメリカは植民地主義のもと間違いを犯したが、現在の状況は本邦よりもずっと良いように見える。我々ももっとアイヌや沖縄に対して敬意を払うべきではないか。こんな状況では中国の事を笑えないだろう。
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