チッコーネ

マッチメーカーのチッコーネのレビュー・感想・評価

マッチメーカー(2023年製作の映画)
3.5
サウジアラビアは中東エリアの大国で、隣国で紛争が発生した際、介入など不穏な動きを見せることも多いが、ここ20年間で映画産業も成長している様子。

本作の前半はフェリーニ『女の都』のようなプロット、しかし演出がミステリー調で、主人公もマストラヤンニ演じるキャラクターのように露悪的でないせいか「この映画、意味がわからない」という感想を抱く間抜けが大勢いるようだ。

クライマックスにおいては「フェミニスト内のイデオロギー対立」の様相さえ呈すが、短編やテレビ界で経験を積んできた監督は男性なだけに「これって、貴方が撮るべきテーマ?」という感想を抱かないでもない。
しかしイスラム社会における問題提起という意味では、発信元の性別に関係なく、価値ある試みだろう。

撮影や照明は美しく、映画先進国にひけをとらぬクオリティ。
白眉は中東の地の利を最大限に活用した「砂漠の古代都市アル・ラウ」でのロケ撮影だ。
照明とモダンな美術の力、そしてラクダの登場も相俟って「正体の知れぬ幻想の保養地」は、作品内にしっかりと現出している。
中東の美意識が反映された女優陣のアイメイク/コスチュームも強力で、観応えあり。