ジョンマルコビッチ総統

おそ松さん 魂のたこ焼きパーティーと伝説のお泊り会のジョンマルコビッチ総統のレビュー・感想・評価

3.3
おそ松くんをモラトリアム継続中の無職の若者に再設定し、あらゆる喜劇スタイルに高いバランス感覚で果敢に挑戦した一期はアニメ史に残る傑作だと思っている。
しかし尖りすぎてバランスを失った二期、ネタ切れの三期と、キャラクター人気に胡座をかいて段々にキャラ萌えと下ネタの目立つ凡作(あくまで一流制作会社基準)に落ちてしまったと感じていた。

本作の感想は、ドラマには特に卓越した内容はなく、ものすごく笑えるところも作劇が良いところもない。それでも一流スタジオなので一定の面白さは常にあり見ていられるが、相変わらず無駄な下ネタも多用してくだらないなぁというもの。
しかし、一期の頃の世界観に常にあった社会に取り残される不安感や疎外感、悲哀の感覚が意識的に再現されていたように感じたところがなんだか良かった。

おそ松さんの魅力の一つはギャグアニメながら、サザエさん時空に陥らない現実ギリギリのところに踏みとどまる緊張感とアイロニーだと個人的には思っている(ニ.三期においてはこれが希薄だった)。
物語後半で現実と折り合いをつけて頑張って生きている登場人物たちは息を吹き返す(彼らはどんちゃん騒ぎでストレスを解放してまた普段の日常へ戦いに戻る)が、現実を見て見ぬ振りをして堕落していた六つ子はグロッキーのままだったのは実に象徴的。そして物語のなかでのギャグ漫画の象徴であるイヤミだけが、から騒ぎを尻目に心地よく酔いどれ続ける。

中高生テンションの六つ子はバカで見ていて微笑ましかったが、いつかニートを卒業してしまうからこその微笑ましさなのだなと改めて思う。