舞台挨拶付で鑑賞。
前半、元犯罪者たちの生活が描かれるんだけどこれがとても人間臭くて素晴らしい。そりゃ社会に戻ってきてすぐに「完全に更生しました!」とはならんよなぁ。人間としての根源にある欲望はなくならないだろうしそういったものとの折り合いをつける難しさを感じられた。
しかし、鑑賞していてどこかモヤモヤともしてしまった。「なんかいい話過ぎねぇか?この人たちのせいで傷ついた人もいるだろうしそんな都合よく人生進むのか?苦悩を抱えた人たちとして美しく描いてねえか?」と。
そんな物語に入り込めない状況で迎える後半の舞台シーンは凄まじい。
言葉の暴力が登場人物たちをフルボッコにする。それはあくまでも観客たちの率直な気持ちであり理不尽なものではないというのがとても残酷だ。
そんな言葉を投げかける彼らを見てスッキリした自分がいた。そして、元犯罪者を特別な目で見ている自分にも気がついた。
今まで何者でもなかった人があたかも現行犯かのように見えてしまった経験が私にもある。
初めて裁判傍聴に行った日、裁判が始まるのを待合室で待っていたおっちゃんがいた。同じように法廷に入ったがおっちゃんは被告人席に座った。下着泥棒の犯人だった。ちなみに紺のパンティー(時価1000円相当)を盗んでいた。
さっきまでただのおっちゃんだったのに別人に見えてしまった。
過去の犯罪歴を知らなければただのおっちゃんだったのに。
日常と非日常の境目はひどく曖昧なのだと感じたのを覚えている。
観客たちは主人公たちを安全圏から批判することで自分は善人なのだと認識したいのかもしれない。無理矢理にでも善と悪の太い線引きをすることで安心したいのだろう。
この映画は私達のありえる未来の話かもしれない。もしそうなったときに自分はどう接するのだろう、生きていくのだろう。鑑賞後にいい意味でもやもやを抱えて帰路につく映画だった。
【今日の一言】
基本的にセリフは俳優さんたちが相談しあって作り上げたものらしい。あと、舞台での言い合いは合計4時間撮影したんだって。すごいね