きまぐれ熊

ヴァチカンのエクソシストのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
3.9
実在のヒーローをリアリティを持って描くにあたって、それこそリアリティのあるカッコ良さを描けるかが肝になると思うんだけど、それをお茶目さからくる余裕で演出してるアモルト神父の造形が強者感があっていい。
冒頭のシーンで、教会で女学生に向かってカッコーの鳴き真似でちょっかい掛けるシーンでグッと掴まれた。こういうこまい所作の描写こそが1番重要だよね。生々しい人間的な強さを持ったリアルなイケオジ感が十分感じられる。
バイクに乗ってる絵も様になってる。カブに乗ってるお坊さんに近い味わいあるよね。もしくはチャリに乗ってる古畑任三郎とか。
ポスクレ後の本人の写真もお茶目な表情なので、きっと本人もこういうキャラクターだったんだろうなと想像させる。

本編はガッチガチの古典的なエクソシスト。
ちょっと捻りはあるけどそこで驚かせようという程でもなく、フェーズを移行しつつ悪魔が絶望に誘ってくるのを祈りの力で祓魔するっていうかなり直球スタイル。
ガジェット頼りでもなく仕事として戦うって枠をはみ出さない。
映像表現も古典ホラー的手法メインなのがいい味を出してて、窓ガラスが順番に割れ、電球は明滅し、暖炉が噴き上げる。どっかで見たFXなんだけど、それがある意味儀式めいていて、試練に対する祈りっていうラインを崩さないので興を削がない。
CGの使用は出来るだけ抑えて、最終決戦で一気に解放するのもクライマックス感に繋がっていて良かった。

目新しさはないんだけど、アモルトの人情味あるキャラクターと様式美に彩られているので退屈しなかったな。誘惑材料で親近感の湧くサイドキックポジションのトーマス神父もいい味してた。

ほぼワンシチュエーションでVFXも抑えめなのに面白く見れるのってやっぱ古典的に受ける演出が面白いって事の再確認でもあったなって感じ。

めちゃめちゃ続編見たい気もするけど、実在の神父を題材にしてたらリアリティとしてはここがギリギリかな〜。
キリスト圏社会が行ってきた過去の過ちを悪魔のせいにしてるのがフィクション世界なら架空の強火キリスト教世界観として楽しめそうだったけど、これ以上やりすぎるとリアル社会観の上で顰蹙を買いそうなライン。
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