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星くずの片隅でのmuraのレビュー・感想・評価

星くずの片隅で(2022年製作の映画)
4.0
コロナ禍に入る前、香港を訪れた。そのときネットでおさえたホテルの部屋がとにかく狭く、驚いた。この映画では、狭い部屋が格差社会を象徴的にあらわす。

清掃会社を経営するザク。会社といっても作業に従事するのはひとり。小さな店舗や家屋を掃除し、コロナ禍ゆえに消毒にもあたる。そこに働きたいとやって来るキャンディ。キャンディは娘とふたり暮らしで、生活は貧しい。家賃は滞納、万引きなどにも手を出す。ザクはとりあえず雇うものの、作業中にマスクを盗むなど、働きぶりはよくない。それでもザクは雇い続け、キャンディもそれにこたえてしだいに変わっていく。ただあるとき、キャンディは大きな失敗をおかしてしまう…

そうかぁ、コロナによる混乱、とくにマスクを求めての騒動なんていうのは日本に限ったことではないんだと。閉店が続き、シャッター通りと化す商店街の様子なども、日本を見ているようで。

そう、映画のつくり自体も、どこか日本映画と通じる。香港を舞台としながらも、我が町で展開されているように思えた。

格差社会の問題をテーマとするところもそう。失敗した者をこき下ろす社会が描かれるところもそう。どこか既視感がある。

弱くはかない女を不器用に守ろうとする男かぁ。石井隆作品でいう「名美」と「村木」か。こういうのは大好物。安易に恋愛に発展しないところもいい。ただ…ザクがもう少しアクが強ければと思うのは欲張りか。キャンディのキャラが強いだけにそう思ってしまった。

で、ザクのキャンディへの思いは、恋愛なのか同情なのか…とも思ってしまったな。
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