げんげん

ビヨンド・ユートピア 脱北のげんげんのレビュー・感想・評価

4.6
北朝鮮脱北者とその支援者に密着した、再現映像なしの完全ドキュメンタリー。脱北する様子を撮影しそのまま見せる。まだ1月だが間違いなく2024年ベスト10に入ると思う傑作。

映画では2組の脱北が描かれる。川を渡り中国国境まで逃げてきた5人家族と、その脱北を支援する韓国人クリスチャン。先に脱北し、息子を呼び寄せる手配をとる母親。5人家族の脱北は撮影スタッフも帯同し命懸けの逃亡を見せる。80代の母親と10才に満たない2人の娘を連れて、中国→ベトナム→ラオス→タイの逃亡劇。中国・ベトナム・ラオスは親北朝鮮側なので見つかったら強制送還(=拷問)。中国の警察を買収したり、ブローカーに詐欺られたり、ラオスのジャングルを何時間も歩きながらタイを目指す。ここまでしているのに80歳の母親は『金正恩様は素晴らしい。私達がもっと頑張られねば』と洗脳されてるのが恐ろしい。

愛の不時着などで誤解されがちだが北朝鮮は今も人権無視の「ならず者国家」と言われている。『こんな国、他に類を見ない。強いて言うならナチスに近い』とさえ言われている。監視、不当逮捕、拷問、強制労働、レイプが今も普通に残っている。国自体が刑務所と映画では説明される。それでも国民が反旗を翻さないのは、国ぐるみで国民を洗脳しており『他の国と変わらない』と信じこまされているからである。

是非多くの人に見てほしい会心の出来。

2024年7本目
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